在庫の除却時の留意点について
今回は在庫の除却や市場価格より低く販売する際の留意点についてです。新型コロナウイルスの影響で本来販売予定だったものが販売できなくなり除却するケースや価格の引き下げを検討するようなケースがみられます。
新型コロナウイルスの影響で本来は問題なく販売する予定だった商品について、予定通りの販売ができなくなるようなケースが出てきています。そのような場合の処理方法として、
・当初の販売予定価格よりも低く販売をする
・当面は販売が見込めずに将来的に販売できる場合にも価格が下がる可能性が高い
・今後長期的に販売が見込めずに除却をする
の3つのケースが考えられます。
<当初の販売予定価格よりも低く販売をする>
当初の販売予定価格よりも低く販売する場合、在庫の評価を変えずにそのまま販売し利幅が減ったり赤字取引になるような場合には、低廉譲渡や移転価格税制の指摘を受ける可能性が考えられます。
このような場合、販売価格が低すぎるとして、歳入局からみなし売上のVAT申告をするように指摘される可能性が考えられます。例えば歳入局からみて200バーツで売れるものを150バーツで販売するような場合に、差額の50バーツの7%(VAT税率)の3.5バーツを追加で申告・納税するよう指摘をされるようなケースです。
売上時の仮受VATは本来顧客より回収して歳入局に申告・納税しますので会社にとってはコストになりませんが、みなしVATによる申告・納税分については顧客からの実際の回収はないため、会社にとって追加コストとなるため注意が必要になります。
<当面は販売が見込めずに将来的に販売できる場合にも価格が下がる可能性が高い>
期末時点で将来的に販売できる可能性があるものの、当初の予定よりも価格が下がる可能性が高い場合には、低下法に基づき評価額を変える必要があります。その場合、評価損を期末に計上することとなります。
ただし、評価損の計上は会計上評価が下がったタイミングで引き当て計上することとなりますが、税務上は実際の取引による損失が発生する、同じアイテムで価格が下がった取引実績があるまで損金算入ができません。
また、棚卸資産の再評価にかかる評価損は歳入法の損金不算入項目の明記はないものの、価格の下落が適切なものとして認められない場合には、最終的な取引時の損失にかかる損金算入がみとめられない、また上記の販売価格を下げる場合と同様にみなしVATの申告を要求される可能性がありますので、日々の在庫一覧(ストックカード)での数量・価格の管理と評価損の理由を明確にして記録しておくことが望まれます。
<今後長期的に販売が見込めずに除却をする>
将来的に時間がたっても販売が見込めない場合には、不良在庫として除却することが考えられます。タイでは不良在庫の除却時には、製品の特性上保存が出来ない場合を除き、原則として廃棄の30日までに税務署に通知して税務署立会の下で廃棄理由などを確認のうえ税務上損金として落とすことが可能となります。社内の承認と社会関係者・監査人等の立ち会いで進めるように税務署から指示されるケースもあります。社内承認、税務署の立会手続きを適切に行わない場合や立ち合いにより廃棄理由が認められない場合には税務上損金として処理ができない可能性があります。
現実的に将来の販売価格の下落や販売が見込めない状況は発生すると思いますが、適切な手続きを踏まずに損失処理をしてしまうと、税務リスクを抱える可能性がありますので、留意頂ければと思います。
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米国公認会計士(inactive)
社会保険労務士
長澤 直毅
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